海外留学をすると、就職に有利になると考えている親御さんは少なくないのではないでしょうか。
実際、留学経験は就職活動の中で、どの程度有利に働くのか、就活塾で勤務する筆者がご説明します。
※この記事では、「大学生の海外留学」をテーマに扱います。

結論 留学した事実だけでは有利にならない

結論から言うと、「海外留学した」という事実だけでは、就活で有利になることはないと言って良いでしょう。
海外留学に行く学生の数が少なかった頃は、留学経験がある学生は希少性が高く、留学に行っただけで、就活市場で人気があるという側面もありました。しかし現在は、留学に行く学生の数が増加しています。文部科学省が発表している資料を見ると、1983年には18,066人だった留学に行く日本人の数は、2016年には55,969人になっており、親世代と子供世代では、留学に行く人の数が約3倍になっています。肌感覚では、就活塾に来る大学生も、5人に1人ほどは、海外留学の経験がある印象を受けます。
このように留学に行く学生が珍しいものではなくなった現在、就活市場では、留学に行った事実だけを企業に伝えても、有利に働くことはまずありません。大切なのは、どのような目的で留学に行き、どのように留学生活を過ごし、困難を乗り越えたかということです。
しかし。海外留学をした就活生及びその親御さんの中には、留学をしたから就活は上手くいくはずだ、と強く信じている方がいます。そのようなパターンの場合、留学経験だけを全面にアピールし、受ける会社はグローバル企業のみという状況に陥り、その就活生本来の個性や向いている企業に目が向かず、結果的に就活に苦戦してしまうことがとても多くなります。

目的のある留学はポイント高

それでは、どのような留学体験をすれば、就職に有利に働くことになるのでしょうか。
一般的に、明確な目的を持って行った留学は、就活で高く評価されます。
例えば、「外資系コンサルティング会社に入りたいため、日本人以外と討論できるグローバルな環境に飛び込みたいから」「学びたい学問の有名な教授がアメリカの◯◯大学にいるから」というようなことです。
「語学留学」が目的の場合は、就活でのアピールとしては少し弱いです。なぜなら、大多数の学生が語学留学を目的とするため、他の就活生との差別化が難しいからです。もし語学留学を就活でアピールしたい場合は、語学力を向上させるためにどのような努力をしたか、就活で語れるようになっている必要があります。また、語学力の証明は必須です。英語圏への留学の場合は、TOEIC900以上、TOEFL iBT100以上は持っていると良いでしょう。
一方、「親に勧められたから留学した。現地では日本人とつるんでいた」というような主体性のない留学の場合は、アピールにはなりません。むしろ積極的に就活で口にしないほうが良いかもしれません。

まとめ

留学経験は、多くの親御さんが考えるほど就職に有利に働くことはありません。
実際に、留学をしていても就活では留学経験を積極的にアピールしない就活生も少なくありません。内定を取る、取らないは、海外経験の有無ではなく、日常の過ごし方にあると言えます。
このように、留学は就活に直接的なメリットをもたらすことはあまりないかもしれませんが、若い時期に異文化に揉まれる体験は、いつかきっと人生の役に立ちます。長期的視野から見ると、留学に行くことは、就活ひいては人生に有利に働く、と言えるのかもしれません。